徐々に動けなくなる難病!犬の「変性性脊髄症(DM)」とは

人間の病気で難病指定されている筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)(ALS)ととてもよく似た犬の病気に「変性性脊髄症(へんせいせいせきずいしょう)」という病気があります。

徐々に体全体が麻痺していく難病で、発症すると完治することなく死に至ります。

様々な犬種に見られる病気ですが、日本では特にウェルシュ・コーギー・ペンブロークによく見られる病気です。

今回は「変性性脊髄症(DM)」について詳しくお話しします。

犬の「変性性脊髄症(DM)」とは

犬の変性性脊髄症(へんせいせいせきずいしょう)は
通称DM(Degenerative Myelopathy)と呼ばれる
麻痺が徐々に進行していく慢性の病気です。(以下DM)

最初は後肢の麻痺から始まり徐々に前側に進んでいきます。

麻痺自体に痛みはありませんが、症状が進行していくと
呼吸不全に陥り死に至ります。

8~10歳頃から発症が見られ、
半年から3年ほどかけて進行していきます。

DMは様々な犬種で見られますが

  • ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
  • ジャーマン・シェパード・ドッグ
  • バーニーズ・マウンテン・ドッグ
  • ボクサー

などの犬種に多く見られ、日本では飼育数が多いこともありますがコーギーの発症が特に多いです。

原因は不明な点が多いですが、
遺伝子の変異による可能性が指摘されており、
現在も研究されています。

犬の「変性性脊髄症(DM)」の症状

  • 後肢から全身への麻痺
  • 歩行異常
  • 尿・便失禁
  • 呼吸困難

DMを発症すると後肢を擦って歩くなど、後肢に異常が見られます。

その後は歩行中に足がもつれる、腰がふらつくなどの
歩行異常が起き、立ち上がることが出来なくなります。

症状が後肢の麻痺による異常のみの場合は、
痛みがないため元気・食欲があります。

麻痺が前肢の方に進んでくると起き上がることが出来ず、
排泄コントロールも出来なくなり、失禁するようになります。

麻痺が首の脊髄の方まで進行すると呼吸困難になり、
最終的に死に至ります。

進行の速さはある程度の個体差があります。

犬の「変性性脊髄症(DM)」の治療方法

残念ながらDMの治療方法は確立されていません。

また、DMの”確定診断“は脊髄の病理組織検査を行うことで判明しますが、
この検査は生前に行うことが出来ないため
他の方法で診断を行う必要があります。

初期の症状がヘルニアに似ているため診断も難しく

  • 触診
  • 歩行検査
  • エックス線検査
  • 遺伝子検査
  • CT/MRI検査

などを行いヘルニアの診断要素を否定することで、
総合的にDMの診断をします。

ただしDM診断後も治療方法がないため、
犬のQOLを高めつつ、穏やかに過ごすことを目標とします。

犬の「変性性脊髄症(DM)」との付き合い方

犬がDMと診断された場合、治療方法がないため
長く病気と付き合っていくことになります。

症状の進行に合わせて獣医さんと相談しながら
下記のようなサポートを行います。

適度な運動による筋力の維持と補助

DMは徐々に麻痺が進み、運動が困難になっていきますが
痛みがないため犬は普通に動きたがります。

ヘルニアでは運動制限を行いますが、
DMの場合は積極的な運動を行った犬の方が、
自力歩行出来る期間が長いというデータもあり、
筋肉の萎縮を抑えるために運動が推奨されます。

また、引きずってしまう後肢を保護するために靴を履かせたり、
補助ハーネスによる下半身のつり上げ、
車いすを使用するなどの補助を行い、運動を続けます。

失禁対策にはおむつの使用や圧迫排尿を行う

自力での排泄が難しくなってきたら、
おむつやマナーベルトを使用し介助をします。

自力で排尿できる場合も、膀胱を完全に空にすることが難しくなります。
膀胱を完全に空にできないと膀胱炎になる可能性があるため
膀胱を押して圧迫排尿を行う必要があります。

自宅での圧迫排尿の方法に関しては
動物病院で教えてもらえます。

寝床の工夫

寝たきりになってくると、床ずれを起こしやすくなります。
床ずれを予防するために高反発のマットなどを使用し、
一方だけに力がかからないように体位も変更するようにしましょう。

気分転換ストレス緩和を心がける

犬は上手く動けなくなるとストレスから
攻撃的になることがあります。

気分転換として動ける場合は
おもちゃで遊んだり、散歩をしたり、
起き上がれない場合でも調子が良ければ
カートで外を見せて外の空気を感じさせてあげたりと
気持ちよく過ごさせてあげましょう。

まとめ

「変性性脊髄症(DM)」は特にウェルシュ・コーギー・ペンブロークに
多く発症が見られる治療方法のない難病です。

DMと疑わしい症状が見られたら、動物病院にまず相談しましょう。

DMとは長く付き合う必要があるため、
信頼できる動物病院のサポートや
DMを発症した犬を飼っている方からのアドバイスなどを
参考にするのも良いでしょう。