犬の遺伝性の目の病気に「進行性網膜委縮症」というものがあります。
目の病気として有名な白内障は老齢性が多く、年を取った犬が発症するイメージがありますが、進行性網膜委縮症は生後数か月で発症することもある病気です。
今回は犬の「進行性網膜委縮症」がどんな病気なのかについてお話しします。
Contents
犬の「進行性網膜委縮症」について
犬の「進行性網膜委縮症(別名PRA)」は眼の奥にある網膜が変性・委縮し、
最終的には両目とも失明してしまう遺伝性の病気です。
進行性網膜委縮症は初期症状として、
夜間に目が見えにくくなる「夜盲」という症状が見られます。
網膜の視細胞には、明るい場所で光や色を感じる錐体細胞(すいたいさいぼう)と
色は感じないが、わずかな光でも感知する桿体細胞(らんたいさいぼう)
という細胞が存在します。
進行性網膜萎縮症になるとまず、桿体細胞から変性・委縮が始まるため
初期症状として、夕方から夜間にかけての時間に目が見えにくくなるのです。
最終的には錐体細胞も変性・委縮し、完全に失明してしまいます。
進行性網膜萎縮症は遺伝性疾患のため、
変異遺伝子を持っている犬同士を交配すると、高確率で遺伝します。
好発犬種はミニチュア・ダックスフンド、トイ・プードル、ウェルシュ・コーギー、
ゴールデン・レトリーバーなどです。
犬の「進行性網膜委縮症」の症状
- 夜盲
- 失明
- 白内障など他の眼病の併発
夜盲が見られるようになると、夕方の散歩など外に行くのを嫌がったり
ちょっとした段差にもつまずく様になります。
進行性網膜委縮症の進行は個体差があり、
生後1ヶ月半~3ヶ月齢の若齢で発症し、1~2才で失明してしまう進行の速いタイプや
1~3才で発症し、ゆっくりと数年かけて進行していくタイプがあります。
網膜の委縮により水晶体の変性も起こりやすくなるため、
白内障を発症することもあります。
白内障になると「緑内障」や「ブドウ膜炎」などの眼病を起こすことがありますが、
これらの症状は痛みを伴うため、
異常が見られたらすぐに動物病院へ行くようにましょう。
犬の「進行性網膜委縮症」の治療方法
点眼や内服薬で進行を遅らせる治療を行うこともありますが、
確実な治療法は確立されておらず、最終的には失明してしまいます。
犬の「進行性網膜委縮症」の予防方法
遺伝性疾患のため、予防は難しいと言われます。
進行性網膜委縮症は遺伝子検査を行うことで、
発症のリスクの有無を調べることができます。
そのため、交配を計画している場合は、
遺伝子検査を行うことで子犬への病気遺伝を防げます。
また、遺伝子検査を行っているブリーダーから子犬を迎えることも重要です。
犬が「進行性網膜委縮症」を発症した場合にできること
犬が進行性網膜委縮症を発症してしまった場合、
残念ながら最後には失明してしまいます。
進行性網膜委縮症は少しずつ進行していくため、
犬は目が見えなくなることに徐々に慣れていきます。
そのため、失明しても生活に支障は少ないと考えられていますが、
日常生活で不自由を感じる場面も多くなりますので、
生活環境などを工夫するようにしましょう。
- ぶつかりそうな物を片付けるなどバリアフリーにする
- 散歩中に木や草で目が傷つかないようにする
- 突然触らないようにする
ぶつかりそうな物を片付けるなどバリアフリーにする
犬の目が見えにくくなると、物にぶつかりやすくなったり、
周りが見えないため不安になったりと生活に不自由が出てきます。
犬の生活スペースで歩行の妨げになる物は移動したり、
角にクッションをつけるなど生活環境を工夫してあげましょう。
また、失明してから家具の配置を変更すると
家具にぶつかってしまうので、あまり模様替えはしないようにしましょう。
散歩中に木や草で目が傷つかないようにする
散歩中に木の枝や葉っぱに目が触れると傷が出来、
目の疾患になることがあります。
視力が低下すると犬自身で回避できないことがあるので
犬の目線上に当たるものはないか注意してお散歩をしましょう。
突然触らないようにする
視力が低下すると警戒心が強くなり、周囲に対して敏感になることがあります。
飼い主さんが突然触ることにもびっくりしてしまうことがあるので、
名前を呼んでから触ってあげるなど、気を付けてあげましょう。
まとめ
進行性網膜委縮症は両目とも失明してしまう遺伝性疾患です。
残念ながら治療法は確立されていません。
進行性網膜委縮症は遺伝性疾患のため、子犬に遺伝します。
進行性網膜委縮症の犬を増やさないためにも、
変異遺伝子を持つ犬は繁殖しないようにしましょう。
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