犬の内部寄生虫症!「犬回虫症」について

寄生虫にはノミやダニのように犬の体外に寄生する「外部寄生虫」とフィラリアのように犬の体内に寄生する「内部寄生虫」が存在します。

「回虫」は多くの哺乳類の特に小腸に寄生する「内部寄生虫」で、イヌ科の動物に寄生する回虫を「犬回虫」と言います。

犬が犬回虫に寄生されると、一体どんな症状が見られるのでしょうか。

犬回虫症とは

「犬回虫症」は「犬回虫」が体内に寄生することにより、消化器症状を発症する病気です。

犬回虫の成虫はオスが10cm、メスが20cm程になる大型の寄生虫で、
イヌ科の動物を終宿主とします。

3か月未満の子犬に感染した場合は小腸で成虫にまで発育しますが、
成犬では小腸以外の臓器や筋肉に幼虫が侵入し、
その部位で幼虫のまま数年間生き続けることが多いです。

感染経路は主に犬回虫に感染した母犬から子犬への胎盤感染です。

その他に、乳汁を介しての子犬への感染、虫卵を飲み込む経口感染や、
犬回虫の幼虫を体内に保有するネズミを
犬が捕食して感染することもあります。

犬回虫症の症状

犬回虫症に感染すると下記の症状が主に見られます。

  • 下痢
  • 嘔吐
  • 脱水
  • 腹部膨満
  • 栄養失調
  • 体重低下
  • 発育不良

成犬ではあまり激しい症状は見られずに、無症状のことが多いですが、
子犬の場合は重症になることがあり、
下痢に伴って脱水症状や体重減少、発育不良などが見られる場合があります。

また、多くの犬回虫に寄生されることにより、小腸が閉塞してしまい、
生命の危機に至ることもあります。

犬回虫症の治療方法

犬回虫症は糞便検査により虫卵を検出することで診断をしますが、
犬回虫の成虫は自然に糞便内に排出されることがあるため、
飼い主さんがその回虫を採取し、検査をすることもあります。

治療方法は回虫駆除薬を使用し、必要に応じて下痢止めや栄養剤を投与します。

犬回虫症の予防方法

犬回虫症の予防方法は以下の三点です。

  • 感染動物の糞便をただちに処理すること
  • 犬にネズミなどの感染動物を捕食させないこと
  • 繁殖をする場合は母犬の回虫駆除を行うこと

感染動物の糞便をただちに処理すること

犬回虫症に感染した犬の糞便内には虫卵が排出されますが、
しばらくは感染能力を持たず、幼虫形成卵になると感染能力を持ちます。

幼虫形成卵を含む糞便は感染源となるため、
犬回虫症に感染している犬がいる場合は、
糞便をただちに処理するようにしましょう。

また、散歩中に犬の糞便を土に埋めて処理してしまうと、
犬回虫に感染していた場合、感染拡大の可能性があります。

回虫感染の有無に関わらず、犬の糞便は衛生管理やマナーとして
しっかりと持ち帰るようにしましょう。

犬にネズミなどの感染動物を捕食させないこと

ネズミは犬回虫の虫卵を経口摂取して、犬回虫症に感染することがあります。
ネズミの体内では犬回虫は成長できないため、幼虫のままとどまります。

しかし、そのネズミを犬が捕食することで犬回虫に感染することがあります。

ネズミがよく出る地域では気を付けましょう。

繁殖をする場合は母犬の回虫駆除を行うこと

犬回虫症に感染している母犬から生まれた子犬は、
胎盤や乳汁を経由してすでに犬回虫症に感染している場合があります。

これを防ぐには、母犬が妊娠する前に犬回虫を駆除する必要があります。

犬の繁殖をする場合は、交配前に母犬の糞便検査を行い、
犬回虫がいないか検査をし、感染している場合は駆除を行いましょう。

犬回虫は人にも感染する?

実は犬回虫は人へも感染します。

ただし、人は犬回虫の終宿主ではないため、
犬回虫に寄生されても成虫まで成長することはなく、
幼虫のまま体内に留まります。

症状はまちまちですが犬回虫の幼虫が全身に寄生すると、
肺炎や目の症状を示すことが多いです。

人への感染経路は主に幼虫形成卵の経口摂取です。

犬回虫の感染予防方法は

  • 犬の糞便は排泄後すぐに処理すること
  • 公園などの土を触った後はしっかり手を洗う

です。

人に感染した場合の治療は難しいため、予防を心がけましょう。

まとめ

犬回虫症は成犬では無症状の場合があるなど、比較的死亡リスクの低い感染症ですが、
感染動物が近くにいる場合、人にも感染する可能性があります。

犬同士の感染や、犬から人への感染を防ぐためにも、
糞便の処理など、衛生管理に気を付けましょう。